[編成] クラリネット・クワイアー Clarinet Choir(Es, B-I,II,III, Alto, Bass, C-Alto, C-Bass)
[演奏時間] 6分
[作曲年] 2009.10.20
[初演] 2010.11.22 大田区民ホール アプリコ 小ホール
TCC PRESENTS vol.21 東京クラリネット・クワイアー ミニコンサート
稲垣征夫(Cond.)TOKYO CLARINET CHOIR
[献呈] TOKYO CLARINET CHOIR
[演奏時間] 6分
[作曲年] 2009.10.20
[初演] 2010.11.22 大田区民ホール アプリコ 小ホール
TCC PRESENTS vol.21 東京クラリネット・クワイアー ミニコンサート
稲垣征夫(Cond.)TOKYO CLARINET CHOIR
[献呈] TOKYO CLARINET CHOIR
むかしむかし、空にかかる虹の、その立ちのぼっている場所、「虹のたもと」に棲んでいる人々がいた。彼らは虹の民と呼ばれていた。
彼らは大小さまざまな大きさの黒い縦長の楽器を抱えて暮らしていた。彼らは普段その楽器を使って、ちょっとしたタイミングで「ぷっ」とか「ぴーっ」とか「るるるるー」とか「ぶふぉ」などの音を出した。咳払いでもするように。あるいは会話の途中でコップの水を飲むみたいに。ひと口煙草を吸う、みたいに。
楽しいとき、悲しいときにも音を出した。だから、どこかの家で子どもが生まれたよとか、あっちのほうですごいたくさん魚が捕れたらしいぞとか、ひいきのチームがとうとう1部残留を決めたぜとか、そういうときには方々から音が聞こえてきた。誰かが死んだときにも、やっぱり方々から音が聞こえてきた。
……そんなとき、彼らの頭上から一条の虹が立ちのぼる。彼らの出す音が世界に虹をかける(水彩の建造物は実は音を触媒としていたのだ)。
けれども、真下に棲んでいる彼らにはその虹を見ることはできない。彼らにはあずかり知らぬ虹が世界の空に、美しく、かかるのである。