作曲家・壺井一歩
Composer / Ippo Tsuboi
Works / 作品 > 小さな二人の大冒険

小さな二人の大冒険

[編成] ピアノ連弾(4hands-Piano)
[演奏時間] 23分
[作曲年] 2005/2009
[初演]
[委嘱] カワイ楽器あんさんぶる編集室・出版部
[献呈] 岩崎玲子、山本ユリ、阿部義人

この曲集に収録された作品のうちの6曲は、2005年、カワイ音楽教室の月刊誌「あんさんぶる」に隔月で連載したものである。出版にあたってさらに4曲を追加し、さまざまなスタイルの音楽を冒険する、というコンセプトの連作ピアノ連弾曲集となった。
私の10代までの音楽の師、岩崎玲子、山本ユリ、阿部義人の3氏に献呈されている。

(このページのデモ演奏はすべてノーテーションソフトによるものです)



曇り日の浜辺は いつか晴れて

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二人の冒険はどうやら浜辺から始まるようです。
けれども天気はあいにくの曇り空。聴こえてくるメロディも少し悲しげです。
音楽はそのあと、やや意外な転調によるブリッジを経過しますが、34小節目には冒頭のメロディが明るく変わって登場します。雲が晴れたのでしょうか。
この曲は前半と後半の音楽の表情の変化をしっかりとつかむことが大切です。
これから始まる二人の冒険が希望にみちたものでありますように。



大地と夜空を駈けて

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疾走する、とか滑空する、といった表現が似合いそうな曲です。
でも、それは何かから逃げ出すような走りや飛行ではなく、堂々とした、見得を切るくらいの表現である方がいいでしょう。具体的に言うと、正確なリズム、メリハリを効かせたメロディの歌い口、そしてセカンドのペダルの使い方にかかっています。
大げさなくらい、「かっこよく」弾いて下さい。



わたぼうしのはるだった

漂うような和音とメロディの、ゆるやかな3拍子の曲です。
この曲はファーストの左手とセカンドの右手がいつも重なるように作曲されています。うまくぶつからないように弾ければいいのですが、最初は気にせずぶつかりながらどんどん弾きましょう。
なれてきたら、和音とメロディの音量のバランスを考えるようにして下さい。内声から浮き上がってくるメロディ、再現部でさらにソプラノに追加される新しいメロディが音楽を「立体的」にするのです。



雨のカーテン

雨が降ってきました。
最初はぽつぽつと、次第に雨脚が強くなるように音が少しずつ増えていきます。
冒頭、Ped. の指示のあるところは途中で踏み替えずに音をよく響かせて下さい。逆にcon Ped. の指示のあるところは音がにごらないようにうまく踏み替えます。
ひとしきり強い雨を降らせたあと、雨のカーテンはまた遠ざかっていきます。



ひとひらのメランコリー

mp3 1.8MB

ジャズワルツです。
「メランコリー」ではありますが、「ひとひら」ですからそれほど深刻に憂鬱なわけではないようですね。21小節あたりからはむしろ、淡い希望の光のようなものを感じて弾いて下さい。
あと、どこかにちょっとニヒルな横顔をちらつかせればOKです。
大人っぽく(大人の方は渋く決めて)。



星ぞ降る

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ペダルを使うことでピアノはさらに豊かな響きを得ることができるわけですが、うまく使わなければ響きは当然にごります。ただ、どこからがにごった響きなのか(どこまでが美しい響きなのか)ということは、その曲の性格、音域、ダイナミクスその他さまざまな条件によって違ってくるでしょうし、また、演奏する人の感じ方によっても違ってくることでしょう。
いろいろと試してみて下さい(もちろんセカンドの人がひとりで決めてはいけません)。
降るような星空を仰げるでしょうか。



かもめどり甚句

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「甚句」というのは、広辞苑さんによれば「代表的民謡。七・七・七・五の四句から成る盆踊り歌。」とあります。それはともかく、日本各地の民謡に「○○甚句」がいろいろあるので、「甚句」=「バラード」と訳?してみましょう。
かもめどりバラード。
うーん、この曲にはやはり「甚句」の方が似合いますね。バラードには「ロマン」ですが、甚句には「粋」が大事です。



虹の舞曲

この曲は、バロック時代の舞曲のひとつであるサラバンドのリズムで作曲されています。
サラバンドのリズムももちろん重要ですが、この曲でとくに注目してもらいたいのは和音です。前半は長7の和音、後半は短7の和音になっていて、それらが4種類の展開形で現れます。また、少し難しい話ですが、「いつも同じ音を含む“○7の和音”の連結」があちこちにあったりします。プリズムを通った光が七色に光るように、7の和音がこの曲ではさまざまに光るのです。
フレーズが(1カ所をのぞいて)7小節ずつになっている、というのもこだわってみました。



君は新たな道をゆけ

この曲は二人の二重唱です。
音楽は、情熱的に歌われる部分と、誇り高く確実な歩みを歌う部分が交互に現れて進みます。それぞれの部分の性格をはっきり出して演奏して下さい。二重唱ですから、お互いの歌をよく聴くことが肝心です。
・・・二人はこれまでの長かった旅を振り返って語り合い、これからのお互いの、新たに進むべきそれぞれの道について励まし合います。
冒険もそろそろ終わりに近づいてきたのです。



冒険者たちの帰帆

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曇り空の浜辺から始まったこの冒険、二人は船に乗って帰ってきたようです。
堂々としたイントロに始まり、音楽はそのあといくぶんポリフォニックに進みます。ポリフォニックな音楽で大事なのはお互いがお互いのパートをよく聴くことです。結果的に自分の歌うパートも豊かになるでしょう。
その後、わくわくと盛り上がる中間部を経て、フィナーレになだれ込みます。力強く締めくくって下さい。
・・・これで二人の冒険はひとまず終わりです。
またいつか始まる新たな冒険の日まで!

[試聴]
[出版] カワイ出版 こどものための連弾ピアノ曲集「小さな二人の大冒険」

[録音]

[備考]初出:月刊誌「あんさんぶる」(カワイ音楽教育研究会)2005年奇数月号